ある日のメモから。

彼は森の奥深くで私を待っていました。

彼にはどうしても守るべきものがあり、たぶんその為にあの場所へ向かいました。

私には行くべき場所がたぶんあって、でも足踏みしたり凍りついたりしています。

彼の手は揺るがない決心と執念、そして苦悩を奏でていました。

青さを通り越した黒い顔で、何かを背負っていました。

・・していました。











このメモを書いたのが、一昨年の秋。
まだ暑さの厳しい頃。
昨日のことのように憶えている、ささやかな風景。
いや、見方を変えれば激しい現実。
裏腹な握力をこめていた手。
まだ力を残していた笑顔。
4年前の春に止まった現実。
正しい選択。
究極の選択。
後悔など、しない。
しなくていい。
足元の土は、確かに水を含んでいる。
ずっと乾きはしない。
それでも望んで、場違いな所で声をかけている日常。
遠くから感じる、力の無い笑顔。
そして私は見苦しい。
誰もが違う世界に住んでいる。
ある人は・・・そこから飛び立つ。
ある人は・・・そこから灯りを放つ。
ある人は・・・その場で領土を拡げる。
ある人は・・・その世界を壊す。
ある人は・・・ただ在る。
忌々しい記憶と狂気。
流れ続けるむごいニュース。
つじつまの合わぬ言い訳。
私利私欲のコマを扱う実利主義者。
振りかざされる権力。
盾つくのも流されるのも自由。
苦悩と歓喜、どちらも必然。
あの樹の枝にはもう葉はついていない。
この樹の枝には・・・?
判らない。
でも答えが出る。
きっと、さほど遠くない未来で。